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銀行融資の基本 融資審査マンの見方 中小企業社長との面談日誌

不動産プロジェクト融資の取扱事例

不動産のプロジェクト融資は金融機関によって取り扱いへの姿勢が異なりますし、時期によっても積極的か消極的かが分かれます。
今回は管理者が実際の取扱いをしたハードルの高い不動産のプロジェクト融資の事例を紹介します。

ある不動産会社

D社は設立10年目の不動産業です。
設立以来、不動産の仲介業務や管理業務を中心に業績を拡大してきました。
2年ほど前からは自ら不動産プロジェクトも手掛けるようになり、戸建住宅の分譲業務を拡大してきています。

不動産分譲のプロジェクト案件を積極的拡大

住宅分譲業務は仲介業務や管理業務とは比較にならいほどの大きな売上や利益が一度に期待出来ます。
その反面、分譲が長期化したり売れ残りが発生すると、投資額が大きいだけに会社の業績に深刻な影響をもたらす危険性も併せ持っています。
したがって不動産分譲のプロジェクトを計画するにあたっては、取引先の体力比過大になっていないかを銀行は検証をしています。
D社の経営者は40代とまだ若く、仲介業務等で得たノウハウに自信を持ち、積極的に分譲プロジェクト案件を手掛けています。
当行は主力行の立場であり、D社から分譲プロジェクト案件に対する融資の相談を過去数回受けていましたが、利率など条件面が折り合わず、他の取引銀行にて資金調達をしてきました。

明らかに過大な分譲プロジェクト案件在庫

そして今回D社よりやはり不動産分譲プロジェクト案件の融資相談を受けました。
私は当該不動産の資料をお願いするとともに、現在の分譲プロジェクト案件の在庫一覧の提出をお願いしました。
数日後、D社より不動産の資料とともに現在の分譲プロジェクト案件在庫一覧の提出を受けました。
提出を受けた在庫一覧を見ると複数の分譲プロジェクト案件を手掛けており、幸いにも長期化しているものはないものの、当社の規模対比過大な水準でした。
そして今回相談のあった分譲プロジェクト案件の取得費用は総額で約90百万円であり、この案件を加えると販売用不動産の在庫水準はD社の前期決算の売上を超える水準となります。
これは明らかな過大投資です。

本部稟議は否決

私はD社に、すでに体力比過大な在庫水準であり、売却が長期化するなどすれば、D社の経営に深刻な影響を与える恐れがあることから、今回の案件は中止するよう具申を行いました。
しかし日頃から積極的な経営者は私の意見に耳を傾けるどころか、いずれの分譲プロジェクト案件もほぼ計画通りに進んでおり、複数の引き合いがあるなど売却の見込みに心配は不要であること、今回の分譲プロジェクト案件も良好な住宅地域であり、短期間で売却出来ることなどを繰り返し説明されました。
確かに今回の分譲プロジェクト案件は場所的には良好な範囲内と考えられました。
現地調査をした際にも、近隣は同様の分譲住宅が多く存在し、住宅地としては問題ないことを確認しました。
また担保評価額もD社の取得額を上回るものでした。
私としては過大投資である事実は否めないものの、①今回の案件については早期売却の見込みがあること②過去の分譲プロジェクト案件はいずれも半年程度で完売の実績があること③主力行として分譲プロジェクト案件融資を支援したいことの3つの大きな理由から稟議の作成に着手しました。
決裁権限の規定から今回は本部稟議となりました。
しかし審査結果は「否決」。
否決の大きな理由はやはり私も懸念していたD社の体力比過大な販売用不動産の在庫水準でした。
売却が長引いたり、万が一計画が途中で頓挫した場合、D社の経営に大きな影響が発生するという懸念です。
不動産分譲プロジェクト案件は投資額が多額になる傾向があることに加え、その投資資金は売却するまでの間は固定化することになります。
金額が大きいだけに売れ残りなどの問題が発生した場合、経営に与える影響が大きく、これが不動産分譲プロジェクト案件の怖いところです。

D社の説得に失敗

本部稟議否決の結果を受け、私はD社の経営者に稟議結果を伝えるとともに、やはり過大投資であり、少なくとも現在手掛けている分譲プロジェクト案件が終了してから次の案件に着手するよう説得を試みました。
しかしながら、相変わらずD社の経営者は積極的で、今回の分譲プロジェクト案件のほかに、現在手掛けている分譲プロジェクト案件についても、売却可能性が高いことなどを繰り返して説明を受けました。
何のための主力行なのかといった叱責も受ける始末でした。

信用保証協会保証付融資で対応

プロパー融資で再検討するには、現在手掛けている分譲プロジェクト案件が計画通りに進まない事態になっても、D社の経営に与える影響は軽微であることを十分に主張出来ることが必要です。
しかしながらD社の自己資金に十分な余裕はありませんし、資産も乏しく資金調達余力も見込めません。
さらに経営者や一族の資産背景も乏しい状況です。
このことからD社の変事抵抗力は脆弱と考えざるを得ない状態です。
プロパー融資が困難となれば、あとは信用保証協会の保証付融資で検討することが次善策となります。
私は信用保証協会に直接出向き、D社の現況や分譲プロジェクト案件の状況につき詳細な説明を行い、今回の案件についての保証可否について相談を行いました。
幸いにもD社の信用保証協会の保証利用残はそれほど多くなく、保証枠に余裕がある状態であったことから、信用保証協会より前向きな回答を得ることが出来ました。
私はD社に信用保証協会との事前相談の内容を伝え、保証付融資にて今回の分譲案件の支援を行いたい旨を説明し、了解を得ることとなりました。
数日後、信用保証協会宛の申し込み手続きを行い、無事に保証決定の運びとなり、融資の実行をすることが出来ました。

今後のウォッチが重要

今回は幸いにも信用保証協会の保証が得られたことから、D社に一定の満足を与えられる結果となりました。
しかしD社が過大な販売用不動産在庫を抱えている状況に変わりはありません。
D社の経営者の性格からすると、今後も積極的な投資を行う懸念があります。
ただしいつも計画通りに進むとは限りません。
計画通りに進まない状況に直面しても、D社の経営に与える影響が軽微となるよう、体力を蓄えることも大切であることを丁寧に繰り返し説明し続けることが主力行の担当者としての役割だと私は認識しています。

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