信用保証協会には「保証枠」というものがあります。
銀行から信用保証協会の保証付融資を受ける際に、「保証枠が残っている」「保証枠がいっぱいになっている」といった説明を受けたことがある経営者もいると思います。
信用保証協会の保証枠とは、簡単にいえば信用保証協会が保証できる金額の上限のことです。
ただし、保証枠が残っていれば必ず銀行から融資を受けられるというわけではありません。
この記事では、信用保証協会の一般保証枠とセーフティネット保証の別枠、保証限度額、4号と5号の関係、保証枠が残っていても融資を受けられない理由について、銀行の融資実務の観点からわかりやすく説明します。
信用保証協会の保証枠とは
信用保証協会は、中小企業や個人事業主が銀行などの金融機関から事業資金の融資を受ける際に、その融資を保証する公的機関です。
信用保証協会にはさまざまな保証制度があり、それぞれ利用対象者や保証条件、保証限度額などが定められています。
この保証限度額を、一般的に「信用保証協会の枠」や「保証枠」と呼んでいます。
信用保証協会の保証枠とは
信用保証協会が保証できる金額の上限のことです。ただし、保証枠は融資を必ず受けられる金額ではありません。
信用保証協会の保証枠はいくらまで?
信用保証協会の代表的な保証枠には、一般保証枠とセーフティネット保証などの別枠があります。
一般保証の限度額は、原則として合計2億8,000万円です。
また、一定の要件を満たしてセーフティネット保証を利用する場合には、一般保証とは別に、原則として合計2億8,000万円の保証枠が設けられています。
| 保証枠の種類 | 保証限度額 | うち無担保保証 |
|---|---|---|
| 一般保証枠 | 2億8,000万円 | 8,000万円 |
| セーフティネット保証の別枠 | 2億8,000万円 | 8,000万円 |
| 合計 | 5億6,000万円 | 1億6,000万円 |
※上記は代表的な保証限度額です。個別の保証制度や事業者の属性などによって取扱いが異なる場合があります。また、限度額までの融資を保証することを約束するものではありません。
ここで重要なのは、一般保証枠とセーフティネット保証の別枠は区別される一方、セーフティネット4号と5号は原則として共通の別枠を利用するということです。
信用保証協会の一般枠とセーフティネット4号・5号の関係
信用保証協会の保証制度を理解するために、一般保証、セーフティネット4号、セーフティネット5号の違いを整理します。

※上の図は一般保証、セーフティネット4号、5号という制度の種類を示したものです。4号と5号にそれぞれ独立した2億8,000万円の別枠があるという意味ではありません。原則として両者は共通のセーフティネット保証の別枠を利用します。
一般保証枠とは
一般保証枠とは、信用保証協会の代表的な保証枠です。
信用保証協会の利用対象となる中小企業や個人事業主が、事業資金の調達に利用する基本的な保証枠と考えてください。
一般保証枠の限度額は、原則として2億8,000万円です。
その内訳は、普通保証が2億円、無担保保証が8,000万円となっています。
ただし、利用対象者であることと、実際に保証審査に通ることは別です。
会社の財務内容、資金使途、返済能力などによっては、保証枠が残っていても利用できないことがあります。
セーフティネット保証4号とは
セーフティネット保証4号は、自然災害などの突発的な災害によって売上高等が減少し、経営の安定に支障が生じている中小企業者を支援するための制度です。
利用には、指定地域や指定期間などの条件があり、所定の認定を受ける必要があります。
代表的な認定要件としては、指定地域で一定期間事業を継続していることや、指定された災害等の影響によって売上高等が一定割合以上減少していることなどがあります。
具体的な要件は、対象となる災害や適用される取扱いによって確認する必要があります。
セーフティネット保証4号は、一般保証とは別枠で利用できる制度ですが、いつでも誰でも利用できるわけではありません。
セーフティネット保証5号とは
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している指定業種に属する中小企業者を支援するための制度です。
代表的な要件の一つに、指定業種に属する事業を営み、最近3か月間の売上高等が前年同期と比較して5%以上減少していることなどがあります。
ただし、実際の認定では、指定事業の売上高構成比や兼業の状況などによって判定方法が異なります。
また、原油等の価格上昇や利益率の悪化などに関する認定要件も設けられています。
対象となる指定業種は定期的に見直されるため、利用を検討する際には最新の指定業種を確認してください。
セーフティネット保証5号については、中小企業庁の公式ページで最新の対象業種や認定要件を確認できます。
セーフティネット4号と5号の保証枠は別々なのか
ここは誤解しやすいところです。
一般保証枠とセーフティネット保証の別枠は区別されています。
しかし、セーフティネット4号と5号について、それぞれ2億8,000万円ずつの独立した別枠があるわけではありません。
セーフティネット4号と5号は、原則として同じ別枠の保証限度額を利用します。
したがって、一般保証2億8,000万円、4号2億8,000万円、5号2億8,000万円を単純に合計して、8億4,000万円の保証枠があると考えるのは誤りです。
代表的な整理では、一般保証2億8,000万円とセーフティネット保証の別枠2億8,000万円を合わせて、合計5億6,000万円となります。
ただし、危機関連保証など、さらに別の保証枠が設けられる制度もあります。実際の利用可能額は、適用制度や既存の保証残高によって異なります。
信用保証協会の保証枠が残っているかを確認する方法
銀行から「信用保証協会の枠がいっぱいです」と言われた場合には、まず現在の保証付融資の残高を確認してください。
信用保証協会の保証枠は、原則として保証残高を踏まえて管理されます。
例えば、一般保証枠で既に2億円の保証残高がある場合、一般保証の限度額2億8,000万円との差額は8,000万円です。
ただし、これは単純な残高計算であり、必ず追加で8,000万円の融資を受けられるという意味ではありません。
また、無担保保証の限度額にも注意が必要です。
既に無担保保証を多く利用している場合、全体の保証枠に余裕があっても、新たな無担保保証を利用できないことがあります。
保証枠の残額を銀行に確認する
実務上、最もわかりやすい方法は、取引銀行に現在の信用保証協会の保証残高と保証枠の利用状況を確認することです。
複数の銀行から信用保証協会の保証付融資を受けている場合には、1つの銀行の借入残高だけで判断しないことが重要です。
同じ信用保証協会を利用する保証付融資について、他の金融機関での利用分も含めて確認する必要があります。
保証枠が残っていれば銀行から融資を受けられるのか
ここからは、銀行の融資審査という観点から説明します。
信用保証協会の保証枠が残っていることと、銀行から融資を受けられることは別です。
例えば、保証枠が5,000万円残っていたとしても、銀行が必ず5,000万円を融資するわけではありません。
銀行は、保証枠だけではなく、融資先の返済能力や資金使途などを審査しています。
銀行が確認する主な審査項目
保証付融資でも銀行が確認すること
・売上高や利益の状況
・資金繰りの状況
・既存借入金の残高と返済負担
・今回の融資の資金使途
・今後の返済原資
・税金や既存借入金の支払状況
信用保証協会が保証する融資であっても、返済するのは融資を受けた中小企業や個人事業主です。
そのため、銀行としては、返済の見通しが立たない融資を簡単に行うことはできません。
信用保証協会側でも保証審査が行われます。
銀行の融資審査と信用保証協会の保証審査の両方が必要であることを理解しておきましょう。
信用保証協会の保証枠がいっぱいの場合の対策
信用保証協会の保証枠を使い切っている場合には、どの保証枠を利用しているのか、既存借入金をどのように返済しているのかを整理する必要があります。
既存の保証付融資の返済状況を確認する
保証付融資の返済が進めば、保証残高が減少し、保証枠に余裕が生じる場合があります。
ただし、返済した分だけ必ず新たな融資を受けられるわけではありません。
別枠の保証制度が利用できるか確認する
一般保証枠の利用が多い場合には、セーフティネット保証などの別枠を利用できるか確認する方法があります。
ただし、セーフティネット保証には認定要件があり、対象業種や指定期間などの条件もあります。
要件を満たしていても、融資や保証の審査に通るとは限りません。
プロパー融資を検討する
信用保証協会の保証枠を使わない銀行融資として、プロパー融資があります。
プロパー融資は信用保証協会の保証を付けずに銀行が信用リスクを負担する融資です。
そのため、保証付融資と比べて審査が慎重になることがありますが、会社の財務内容や銀行との取引状況によっては検討の余地があります。
もっとも、保証枠がいっぱいになったからといって、必ずプロパー融資を受けられるわけではありません。
信用保証協会の保証枠についてよくある質問
信用保証協会の保証枠は最大いくらですか?
代表的な一般保証枠は2億8,000万円です。一定の要件を満たしてセーフティネット保証の別枠を利用できる場合には、一般保証と合わせて原則5億6,000万円となります。ただし、制度ごとの特例や個別の利用条件があります。
セーフティネット4号と5号はそれぞれ2億8,000万円ずつ使えますか?
いいえ。4号と5号は原則として共通の別枠を利用します。それぞれに独立した2億8,000万円の保証枠があるわけではありません。
保証枠が残っているのに融資を断られることはありますか?
あります。保証枠は保証制度上の限度額であり、融資の承認額ではありません。銀行や信用保証協会は、業績、資金使途、返済能力などを審査します。
複数の銀行を利用すれば保証枠は増えますか?
銀行を増やしただけで信用保証協会の保証限度額が増えるわけではありません。保証枠の利用状況は、複数の金融機関を通じた保証付融資の残高も踏まえて確認されます。
保証付融資を返済すると保証枠は空きますか?
返済によって保証残高が減少すれば、保証枠に余裕が生じる場合があります。ただし、追加融資には改めて銀行と信用保証協会の審査が必要です。
信用保証協会の保証枠のまとめ
信用保証協会の保証枠とは、信用保証協会が保証できる金額の上限のことです。
一般保証枠は原則2億8,000万円で、一定の要件を満たすセーフティネット保証には別枠が設けられています。
ただし、セーフティネット4号と5号は原則として共通の別枠を利用するため、4号と5号それぞれに2億8,000万円ずつの独立した枠があるわけではありません。
そして、最も重要なことは、保証枠が残っていても必ず銀行から融資を受けられるわけではないという点です。
銀行融資では、最終的に借入金を返済できるかどうかが重要になります。
信用保証協会の保証枠を確認する際には、保証限度額だけでなく、現在の保証残高、利用できる保証制度、会社の返済能力を合わせて考えることが大切です。
信用保証協会の制度や限度額については、中小企業庁「セーフティネット保証制度」も参考にしてください。