銀行から借入をすると、原則として契約で定められた返済日に借入金を返済していかなければなりません。
しかし、中小企業の資金繰りを見ていると、銀行借入の毎月返済額が大きく、資金繰りを圧迫しているケースが少なくありません。
その原因の1つが、借入金の「返済ピッチ」です。
返済ピッチは借入金額や返済期間によって変わりますが、複数の借入を繰り返すことで、毎月の返済負担が想定以上に膨らむ場合もあります。
この記事では、融資担当の銀行員としての実務経験をもとに、返済ピッチの意味、借入件数との関係、複数の借入をまとめて返済負担を軽減する方法について説明します。
借入金の返済ピッチとは?
返済ピッチとは、借入金の元金をどのくらいの速さで返済していくかという返済ペースのことです。
例えば、3,000万円を借り入れて毎年1,000万円ずつ元金を返済する場合、年間の返済ピッチは1,000万円です。
一方、同じ3,000万円でも毎年600万円ずつ返済する場合、年間の返済ピッチは600万円となります。
返済ピッチが速いほど借入金の残高は早く減りますが、その分、毎月の資金繰りへの負担は大きくなります。
なお、ここでいう返済ピッチは主として元金返済のペースを指します。実際の資金繰りでは、元金返済に加えて支払利息も考慮する必要があります。
融資担当銀行員の回答
・返済ピッチとは借入金の元金を返済するペース
・借入金額が同じなら、一般に返済期間が短いほど返済ピッチは速くなる
・複数の借入の返済が重なると、毎月の返済負担が膨らむことがある
・返済負担を軽減する方法の1つが、借入の一本化や返済期間の見直し
借入期間による返済ピッチの違い
最初に、借入期間によって返済ピッチがどのように変わるのかを確認します。
例として、銀行から3,000万円を借り入れ、元金均等返済で3年間または5年間にわたって返済するケースを比較します。
ここでは計算をわかりやすくするため、元金の返済額のみを比較し、利息は含めません。
| 比較項目 | 借入期間3年 | 借入期間5年 |
|---|---|---|
| 借入金額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 返済回数 | 36回 | 60回 |
| 毎月の元金返済額 | 約83.3万円 | 50万円 |
| 年間の元金返済額 | 1,000万円 | 600万円 |
借入金額は同じ3,000万円ですが、借入期間を3年から5年にすると、年間の元金返済額は400万円少なくなります。
毎月の元金返済額も約33.3万円少なくなる計算です。
このように、借入期間が長くなるほど、毎月の元金返済負担を小さくできるという特徴があります。
借入期間が短いほど返済ピッチは速くなり、毎月の元金返済負担は重くなる
借入期間は資金繰りに無理のない長さにする
銀行から新規借入をする際には、できるだけ短期間で返済することだけを考えるのではなく、資金繰りに無理がない返済期間を設定することが大切です。
借入時点では3年間で十分に返済できると思っていても、その後に売上が減少したり、仕入価格が上昇したりする可能性があります。
そのため、5年間での返済が認められ、資金使途や資金繰りの見通しにも適しているのであれば、5年間の借入を検討する価値があります。
ただし、借入期間を長くすれば、その分だけ借入残高が長く残り、金利などの条件が同じなら支払利息の総額が増える場合があります。
毎月の返済負担と支払利息の総額の両方を考えて、借入期間を決めることが重要です。
借入期間は後から変更できるのか
借入後に返済負担が重くなった場合、銀行に返済期間の延長を相談することはできます。
ただし、借り手の希望だけで返済期間を延長できるわけではありません。
銀行の審査や契約変更の手続きが必要です。
また、返済条件を変更する理由や内容によっては、銀行が返済条件の緩和として取り扱う場合があります。
そのため、借入を申し込む段階から、将来の業績変動も想定した返済計画を立てておくことが大切です。
借入期間の延長は銀行に相談できるが、必ず認められるわけではない
返済負担が重いと感じたら資金繰りを確認する
毎月の借入返済が重いと感じる場合には、会社の資金繰りを確認する必要があります。
特に、次のような状態には注意が必要です。
- 借入金の返済後に預金残高が大きく減少する
- 毎月の返済資金を確保するために新たな借入を繰り返している
- 売上はあるものの、売掛金の回収が遅く現金が不足している
- 利益や営業キャッシュフローに対して元金返済額が大きい
ただし、返済負担が重いからといって、必ずしも会社の経営が悪化しているとは限りません。
季節的な資金需要や売上の増加による運転資金の増加など、一時的な理由で資金繰りが厳しくなることもあります。
銀行に相談する際には、資金繰りが厳しくなっている原因と今後の改善見通しを説明できるようにしておきましょう。
銀行は借入途中で早期返済を要求できるのか
銀行から融資を受けている会社には、契約に基づく「期限の利益」があります。
期限の利益とは、約束された返済期限が到来するまでは、原則としてその期限に従って返済できるという利益です。
そのため、会社が契約どおりに返済を続けている場合、銀行が一方的に返済期限を早めて全額返済を求めることは原則としてできません。
ただし、返済の延滞や契約上の期限の利益喪失事由が発生した場合などには、例外があります。
期限の利益があることと、銀行が追加融資や返済期間の延長に応じるかどうかは別の問題です。
資金繰りに余裕ができたら繰上返済も検討する
長めの借入期間で返済負担を抑えた後、業績が好調になって資金繰りに余裕が生じた場合には、繰上返済を検討する方法もあります。
ただし、繰上返済には銀行の承諾が必要な場合や、繰上返済手数料が発生する場合があります。
また、手元資金を減らしすぎると、急な支払いへの対応が難しくなります。
繰上返済をする際には、今後必要となる運転資金を確保したうえで判断することが大切です。
借入件数が増えると返済ピッチはどうなるのか
次に、借入件数と返済ピッチの関係を説明します。
借入金の返済額を決める主な要素は、借入金額、返済期間、返済方式です。
したがって、借入件数が多いという理由だけで、必ず毎月の返済額が増えるわけではありません。
しかし、実際の中小企業の資金繰りでは、追加借入を繰り返すことで、それぞれの借入の元金返済が重なり、毎月の返済総額が増えてしまうケースがあります。
ここが重要なポイントです。
追加借入を繰り返すと返済額が積み重なる
例えば、最初に銀行から1,000万円を借り入れ、毎月約27.8万円ずつ元金を返済していたとします。
その後、資金繰りのために追加で借入を行い、その借入についても毎月の返済が始まると、既存借入と新規借入の返済が重なります。
追加借入を繰り返せば、借入件数が増えるとともに、毎月の返済総額が膨らむ場合があります。
実際の借入明細を例に説明します。

上の表は、ある中小企業の銀行借入の明細例です。
この会社には5件の借入があり、毎月の元金返済額は合計1,114千円です。
年間では次の金額を返済しています。
1,114千円 × 12か月 = 13,368千円
つまり、毎年約1,337万円もの元金を返済していることになります。
この会社は当初、1,000万円の借入を1件だけ利用していました。
その後、資金需要が発生するたびに追加借入を行い、借入件数が5件に増えました。
最初の借入では毎月の返済額は278千円でしたが、追加借入の返済が重なり、毎月の返済総額が1,114千円まで増加したのです。
追加借入を繰り返すと、それぞれの元金返済が重なって返済負担が膨らむことがある
複数の銀行借入を一本化すると返済ピッチは減らせるのか
複数の銀行借入の返済が重くなった場合、検討できる方法の1つが「借入の一本化」です。
借入の一本化とは、複数の借入を新たな借入などによってまとめ、返済条件を整理する方法です。
銀行融資の実務では、既存の借入をまとめることを「借換え」などと呼ぶ場合もあります。
ただし、借入を一本化すれば必ず返済額が減るわけではありません。
毎月の返済額が減るかどうかは、一本化後の借入金額、返済期間、返済方式などによって決まります。
借入残高2,107万8千円を一本化する計算例
先ほどの借入明細のうち、次の赤丸で囲んだ部分をご覧ください。

この会社は、当初の借入金額の合計が4,000万円でしたが、返済が進んで現在の借入残高は21,078千円となっています。
毎月の元金返済額は1,114千円です。
仮に、この借入残高21,078千円を1件にまとめ、元金均等返済で新たに3年間かけて返済することが認められたとします。
その場合の毎月の元金返済額は次のようになります。
21,078千円 ÷ 36か月 = 約586千円
現在の返済額と比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 現在の借入5件 | 一本化後の試算 |
|---|---|---|
| 借入残高 | 2,107.8万円 | 2,107.8万円 |
| 毎月の元金返済額 | 約111.4万円 | 約58.6万円 |
| 年間の元金返済額 | 約1,336.8万円 | 約702.6万円 |
| 毎月の返済額の差 | 約52.8万円の減少 | |
この試算では、毎月の元金返済額が約111.4万円から約58.6万円へと減少します。
ただし、これは借入残高を新たに36か月で返済することが認められた場合の計算例です。
元の5件の借入と同じ返済条件のまま単純に1件へまとめるだけで、返済額が半分になるという意味ではありません。
また、実際の借換えでは金利、手数料、保証料などの負担が発生する場合があります。
借入の一本化と返済期間の見直しによって、毎月の元金返済額を軽減できる場合がある
一本化で毎月の返済額が減る理由
借入の一本化によって返済額が減る場合、その主な理由は、残っている借入金を新たな返済期間で返済することになるためです。
例えば、残存返済期間が短い借入が複数ある場合、それらを新たに長めの期間で借り換えることが認められれば、毎月の返済負担が軽くなる可能性があります。
反対に、一本化後の返済期間が短ければ、毎月の返済額が増えることもあります。
そのため、借入件数だけに注目するのではなく、一本化前後の毎月返済額と総返済額を比較することが大切です。
銀行に借入の一本化を相談する方法
複数の借入をまとめたい場合には、取引銀行に相談することができます。
私自身、銀行の融資実務において、複数の借入を1件または数件に集約する手続きを数多く行ってきました。
ただし、すべての借入を自由にまとめられるわけではありません。
借入の資金使途、返済状況、保証の有無、担保条件などを確認したうえで、銀行が判断します。
新規借入の相談時に既存借入の一本化も相談する
追加借入が必要になった場合には、新たな借入を1件増やす方法だけでなく、既存借入とまとめる方法も検討できます。
例えば、銀行に次のように相談します。
「今回の追加運転資金の借入にあわせて、現在返済している借入もまとめ、毎月の返済額が大きく増えないようにすることはできますか」
このように、毎月の返済負担を考慮した借入方法を相談すること自体は、特別なことではありません。
銀行としても、会社の資金繰りが安定し、無理なく返済を継続できることは重要です。
ただし、借入の一本化を認めるかどうかは、会社の財務内容や資金繰り、返済能力などによって異なります。
銀行に相談する前に準備したい資料
借入の一本化を相談する際には、次の資料を準備しておくと説明がしやすくなります。
- 現在の借入金一覧表(銀行別・借入別)
- 各借入の残高、毎月返済額、最終返済期日
- 借入金の資金使途
- 直近の決算書と試算表
- 今後の資金繰り予定表
特に重要なのは、一本化することで毎月の返済額がどの程度変わり、今後の資金繰りがどう改善するのかを説明することです。
単に返済額を減らしてほしいと伝えるだけでなく、今後の売上や利益の見通しもあわせて説明することが望ましいでしょう。
運転資金と設備資金は一本化できるのか
借入の一本化を検討する際には、資金使途にも注意が必要です。
銀行融資の資金使途には、大きく分けて運転資金と設備資金があります。
運転資金の借入は一本化を検討しやすい
運転資金は、仕入代金や人件費など、日常の事業活動に必要となる資金です。
複数の運転資金借入がある場合には、資金繰りの安定を目的として一本化や借換えを相談できる場合があります。
ただし、既存借入が信用保証協会の保証付融資である場合などには、保証制度の条件も確認する必要があります。
同じ運転資金であっても、すべての借入を自由にまとめられるとは限りません。
設備資金の借入は条件を慎重に確認する
設備資金は、機械や建物などの設備投資を目的とする借入です。
設備資金は、その設備投資によって生み出される収益などを踏まえて返済期間を設定するのが基本です。
そのため、運転資金とは資金使途や返済計画の考え方が異なります。
ただし、設備資金の借入は絶対に一本化できないというわけではありません。
設備資金同士の借換えや、既存借入の返済条件の見直しが認められる場合もあります。
一方で、融資制度の制約や担保・保証条件などによって、一本化が難しい場合もあります。
設備資金については、運転資金以上に借換えの目的と返済原資を明確にして銀行に相談することが重要です。
借入の一本化はリスケに該当するのか
借入の一本化を検討する際に、銀行からの評価を心配する経営者もいます。
特に気になるのが「リスケ」に該当するのかという点です。
一般にリスケとは、借入金の返済が難しくなった場合などに、金融機関と協議して返済条件を変更することをいいます。
しかし、借入の一本化とリスケは、必ずしも同じ意味ではありません。
例えば、通常の資金調達の一環として複数の運転資金借入を借り換え、資金繰りを効率化する場合があります。
一方、返済が困難になったために元金返済の猶予や返済期間の延長を受ける場合には、返済条件の緩和として取り扱われる可能性があります。
銀行における取扱いは、借換えの目的、会社の返済能力、契約内容などによって異なります。
したがって、一本化すればリスケにならないと決めつけず、取引銀行に確認することが大切です。
返済ピッチを減らすときの注意点
毎月の元金返済額を減らすことは、資金繰りを改善する方法の1つです。
しかし、返済ピッチを遅くすることには注意点もあります。
借入期間が長くなると支払利息が増える場合がある
返済期間を長くすると、毎月の元金返済額は減少する一方で、借入残高が長く残ります。
そのため、金利などの条件が同じであれば、支払利息の総額が増える場合があります。
毎月の返済額だけでなく、総返済額も確認しましょう。
借入の一本化には銀行の審査が必要
借入の一本化は、借り手の希望だけで実行できるものではありません。
銀行は、会社の業績、財務内容、資金繰り、既存借入の返済状況などを確認して判断します。
また、信用保証協会の保証付融資では、利用する保証制度の条件によって借換えの可否が異なります。
返済額を減らすだけでは根本的な改善にならない場合がある
毎月の返済額を減らせば、一時的に資金繰りが改善する場合があります。
しかし、本業で継続的に資金不足が発生している場合には、返済条件の見直しだけでは問題が解決しないこともあります。
売上総利益の改善、経費の見直し、売掛金の回収期間の短縮などもあわせて検討することが重要です。
借入件数と返済ピッチについてよくある質問
借入金の返済ピッチとは何ですか?
借入金の元金を返済するペースのことです。一般に、年間や毎月の元金返済額によって返済ピッチの速さを表します。
借入件数が多いと返済額は増えますか?
借入件数が多いだけで返済額が増えるわけではありません。ただし、追加借入によって元金返済が重なると、毎月の返済総額が増えることがあります。
複数の銀行借入を一本化できますか?
銀行の審査や融資制度の条件によっては可能です。特に複数の運転資金借入については、一本化や借換えを相談できる場合があります。
借入を一本化すると毎月の返済額は減りますか?
一本化後の返済期間などによっては減らせます。ただし、借入を1件にまとめるだけで必ず返済額が減るわけではありません。
借入の一本化はリスケになりますか?
必ずしもリスケになるわけではありません。ただし、返済困難を理由とした条件変更などの場合には、返済条件の緩和として取り扱われる可能性があります。
借入の返済が苦しいときはどうすればよいですか?
まず借入金一覧表と資金繰り予定表を作成し、毎月の返済負担と今後の資金不足額を把握しましょう。そのうえで、借入の一本化、借換え、返済条件の見直しなどについて、早めに取引銀行へ相談することが大切です。
借入の件数と返済ピッチのまとめ
借入金の返済ピッチは、会社の資金繰りに大きな影響を与えます。
借入金額が同じでも、返済期間が短ければ毎月の元金返済額は大きくなります。
また、追加借入を繰り返して複数の元金返済が重なると、毎月の返済負担が膨らむことがあります。
そのような場合には、借入の一本化や返済期間の見直しが、資金繰り改善の選択肢となります。
ただし、銀行の審査や保証制度の条件によって、希望どおりの借換えができない場合もあります。
まとめ
・返済ピッチとは借入金の元金を返済するペース
・借入期間が短いほど毎月の元金返済負担は重くなる
・追加借入による返済の重複が、資金繰りを圧迫することがある
・複数の借入を一本化し、返済期間を見直すことで返済額を軽減できる場合がある
・借入の一本化には銀行の審査が必要
・新規借入時から、無理のない返済期間と借入方法を検討することが重要
銀行借入では、借りられる金額だけでなく、借りた後に毎月いくら返済することになるのかを確認することが大切です。
返済負担が重いと感じた場合には、借入件数、借入残高、返済期間を整理し、早めに取引銀行へ相談しましょう。