社長がブラックリストであるとその社長が経営する会社は銀行から融資を受けることは可能なのでしょうか?
ブラックリストの社長でも融資が可能なのか、その実態について融資担当の銀行員が説明をします。
目次
社長がブラックリストであると現実には融資が難しい
現実には社長がブラックリストである場合、その社長が経営する会社は銀行から融資を受けることは困難となります。
なぜ社長がブラックリストであると会社は銀行から融資を受けることが難しくなるのかを説明します。
本来は社長と会社とは別物
会社の融資は会社が返済する義務を持ちます。
社長の融資は社長が返済する義務を持ちます。
融資の分野では会社と社長は別人格です。
したがって社長がブラックリストであるかどうかは、会社の融資には関係がないというのが原則です。
会社と社長は別物というのが原則的な考え方
中小企業は会社と社長が実質一体
しかし、特に中小企業の場合には社長が会社のオーナーであることが圧倒的に多いです。
社長自身も会社のことは「俺の会社」と考えています。
そのため銀行では会社と社長は実質一体だと考えています。
会社の資金繰りが苦しいのであれば社長が自身の個人資金を会社に投入することは珍しいことではありません。
逆に社長の資金繰りが苦しいのであれば会社の資金を社長に貸し付けることも珍しいことではありません。
中小企業では社長と会社は一体の関係
社長がブラックリストであると会社宛の融資は難しい
ブラックリストであるということは資金的に破綻しているということです。
そのため例えば会社宛に運転資金の融資を行ったとしても、その資金がブラックリストである社長に貸し付けられるなど流用される懸念が大きいです。
社長に貸し付けられた資金が社長から返済されることを期待することもできません。
このようなことから社長がブラックリストであると銀行から会社宛の融資は難しいのが現実です。
社長がブラックリストの会社への銀行の融資は困難
銀行は社長がブラックリストであることをわかるのか?
それではそもそもですが、銀行は会社の社長がブラックリストであることはわかるのでしょうか?
基本的に銀行は社長がブラックリストであるかどうかを知らない
基本的に銀行は会社の社長がブラックリストであるかどうかは知りません。
銀行内にブラックリストが出回っていることはありません。
したがって銀行はそもそも社長がブラックリストであるかどうかは知らないのです。
社長本人からブラックリストであることを自主申告をされない限り、銀行はわからないのです。
社長がブラックリストであることを銀行はそもそも知らない
どのようにしてブラックリストであることがわかるのか?
ブラックリストであるかどうかは個人信用情報を調査することで初めて銀行は知ることとなります。
銀行は社長の個人信用情報を調査するのか?
それでは銀行は会社の融資に関して社長の個人信用情報を調査するのでしょうか?
原則として社長の個人信用情報は調査しない
会社の融資においては銀行は原則として社長の個人信用情報を調査することはありません。
管理者が勤務している銀行を例にしますと、上記の通り会社の融資の検討にあたって社長の個人信用情報を調査するようなことはしていません。
中小企業の場合、会社の融資においては社長が連帯保証人になることが多いですが、連帯保証人だからという理由においても社長の個人信用情報を調査することはしていません。
したがって社長がブラックリストであるかどうかを銀行は知りません。
銀行は会社の融資において社長の個人信用情報を調査しない
ブラックリストではないが差押等はわかる
銀行の融資実務を行っていると社長の個人の預金口座に差押が入ることがあります。
市町村や社会保険料関係などで社長の個人の預金口座に差押が入ることがあります。
社長の個人の預金口座に差押が入ると会社の融資を担当している部署には連絡が入る仕組みとなっています。
差押はブラックリスト並みの重大事項
差押が入ったこととブラックリストとは直接の関係はありませんが、社長の個人の預金口座に差押が入ることはブラックリストに匹敵するマイナス情報です。
差押は尋常ではない事態であり、社長の資金繰りに重大な懸念が持たれる事態です。
社長の預金口座への差押はブラックリストに匹敵する重大な事態
社長の差押で会社は融資全額を即時返済しなければならない
社長の個人の預金口座に差押が入ることがどれくらい重大事項であることを例で説明をします。
銀行との融資の基本約定書である銀行取引約定書には会社の融資の連帯保証人に差押が入ると会社は融資全額を即時に返済しなければならないという重要な規定があります。
銀行の融資用語では期限の利益の喪失条項と呼ばれているものです。
連帯保証人である社長の個人の預金口座に差押が入ると、会社は期限の利益を喪失し融資全額を即時に返済しなければならない事態となります。
社長への差押で会社は融資全額を即時に返済しなければならない
社長がローンを延滞している
ローンを延滞してもそれが直ちにブラックリストに登録されるわけではありません。
延滞の期間が3ヶ月以上となって初めてブラックリストに登録されます。
したがって延滞はしているものの延滞期間が3ヶ月未満であればブラックリストには登録されません。
しかし延滞期間が3ヶ月未満であっても社長がローンを延滞している場合には会社の融資は困難となります。
社長が会社と同じ銀行でローンを利用している
社長が会社で融資を受けている同じ銀行でローンを利用している場合、会社の融資の審査の過程で銀行は社長の個人ローンの返済状況を調査します。
その結果、社長がローンの返済を延滞している事実があると、やはり会社と社長の一体性の関係から会社の融資は困難となります。
もっともさきほどの差押のように会社が融資全額を即時に返済しなければならないという事態までは発展はしませんが、会社宛の追加融資は困難となります。
社長がローンを延滞していると会社の追加融資は困難となる
信用保証協会の存在
もう1つ、中小企業の融資において説明をしなければならないのが信用保証協会の存在です。
中小企業の融資の多くは信用保証協会を利用している
信用保証協会とは中小企業や個人事業主が銀行から融資を受ける際に保証人になってくれる公的機関です。
中小企業が銀行から融資を受けやすくなるように信用保証協会は大きな役割を担っています。
実際にも中小企業向けの銀行の融資は信用保証協会の保証を利用したものとなっています。
したがって中小企業の融資と信用保証協会とは切っても切れない関係にあります。
信用保証協会は社長がブラックリストかどうかわかるのか?
では信用保証協会は社長がブラックリストであるのかどうかはわかるのでしょうか?
答えはさきほどの銀行と同じように原則として信用保証協会は社長がブラックリストであるかどうかを知りません。
信用保証協会が社長がブラックリストであるのかどうかは知るには社長の個人信用情報を調査する必要があります。
原則として信用保証協会は社長がブラックリストであるかどうかを知らない
信用保証協会は個人信用情報を調査するのか?
では社長がブラックリストであるかどうかを知るために信用保証協会は社長の個人信用情報を調査するのでしょうか?
信用保証協会では初めて利用申し込みがある会社である場合には、その社長の個人信用情報を原則として調査をします。
その結果、社長がブラックリストであることが判明すれば信用保証協会の利用は困難となります。
信用保証協会の利用が困難であることがわかれば、銀行は会社の融資を行いません。
もっとも信用保証協会の利用が2回目以降の場合には原則として信用保証協会は社長の個人信用情報を調査することはありません。
信用保証協会の利用が初めての場合には信用保証協会は原則として社長の個人信用情報を調査する
社長がブラックリストでもビジネスローンは利用できるのか?
このように社長がブラックリストであると銀行から会社の融資を受けることは困難となります。
それでは社長がブラックリストであっても銀行は無理でもビジネスローンであれば利用はできるのでしょうか?
ビジネスローンの利用可否は是々非々
銀行以外で信販会社やカード会社、消費者金融会社では多くの事業者向けのビジネスローンを取り扱っています。
銀行に比べると一般的には審査基準が低いという特徴があり、決して少なくない事業者がビジネスローンを利用されています。
では社長がブラックリストであってもビジネスローンであれば利用は可能なのでしょうか?
ビジネスローンを取り扱う会社のよって対応は異なりますが、多くの場合では社長がブラックリストであることを持ってビジネスローンが利用できないということは少ないです。
会社の現在の業績や今後の見通しを勘案して、社長がブラックリストであってもビジネスローンを実行されることが少なくありません。
社長がブラックリストのため銀行から融資を受けることは難しい場合であっても、ビジネスローンは検討する価値があります。
社長がブラックリストであることを持ってビジネスローンが利用できないことはない
ブラックリストの社長でも中小企業は銀行から融資可能?のまとめ
以上、社長がブラックリストでも会社は銀行から融資を受けることはできるかどうかについてまとめますと次のようになります。
まとめ
・ブラックリストではないが社長が差押を受けたりローンを延滞していると銀行は会社の融資を行わない
・ビジネスローンは社長がブラックリストであっても利用ができる可能性がある