在庫は外部の人間にはその実際の保有高を含めて非常にわかりづらい項目ですから、銀行融資の審査においても慎重に分析をするポイントです。
在庫は事業を行う上で必要なものである一方で間違いなく資金繰りにはマイナスとなるものです。
銀行の融資審査における在庫の見方について説明をします。
在庫量の水準
企業の規模によってあるべき適正な在庫量は異なりますから、在庫量がどれくらいあるのかを計る物差しとして平均月商対比の水準にて判断します。
つまり在庫回転期間です。
在庫回転期間は在庫÷平均月商にて求めることが出来ます。
月商の何か月分の在庫を保有しているのかを示しています。
事業内容によって在庫回転期間は異なりますが、おおむね1ヶ月から2ヶ月ぐらいが適正な在庫水準ではないでしょうか。
したがって銀行融資の審査においては在庫回転期間が2ヶ月を超えてくると注意を示すようになります。
在庫回転期間の長期化
在庫回転期間が年々長期化している場合には
・在庫を操作することで利益を水増しし決算を粉飾していないか
というような疑問を銀行融資の審査マンは抱くようになります。
在庫を保有するには資金が必要だったはずです。
そして在庫の保有のために要した資金はその在庫が売れて初めて回収することができます。
在庫が売れるまでは資金の立替が続くわけです。
したがって在庫の回転期間が長期化する、つまり在庫がなかなか売れないとなると資金の立替期間がそれだけ長くなります。
このように在庫の回転期間の長期化は間違いなく資金繰りを圧迫するのです。
2番目の在庫操作による利益の水増しについて簡単に補足します。
損益計算書の売上原価は次の算式によって求められています。
売上原価=期初在庫量+当期仕入高(製造原価)-期末在庫量
期末在庫量を実際以上に多く計上することで売上原価を少なくすることが出来ます。
売上原価は損益の費用ですから、売上原価を少なく見せかけることで利益を水増しすることが出来るのです。
このような粉飾操作を行った場合には、実際以上の在庫があるように計上するわけですから、当然ながら在庫回転期間が長くなることになります。
在庫には特段の注意を
在庫は売れて初めて現金化します。
したがって必要以上の在庫の保有は資金繰りを圧迫することになります。
少なすぎる在庫はせっかくの商機を逃してしまうこともありますから、事業の形態によってはある程度の在庫の保有は必要です。
しかし常に在庫量は把握しておかなければなりません。
必要以上の在庫は間違いなく資金繰りを悪化させます。