個人事業主が保証協会を利用して銀行から融資を受けている状態で、その個人事業主が死亡した場合に返済はどうなるのかというテーマです。
個人事業主が死亡後の保証協会の返済に関する事柄は実際に起こっている事象です。
融資担当の銀行員が説明をします。
父が個人事業主として借金
父が個人事業主としてその妻や子供などの家族とともに一緒に事業を行っていることはよくある事例です。
個人事業主の借金
個人事業主も運転資金や設備資金など事業で必要となる資金は銀行から融資を受けることが可能です。
そして銀行の個人事業主向けの融資のほとんどは保証協会という公的機関の保証制度を利用したものとなっています。
個人事業主はどうしても事業の基盤が脆弱です。
事業の基盤が脆弱だということは融資の返済能力に懸念が持たれるということです。
融資の返済能力に懸念が持たれるということは銀行としては将来の融資の貸倒を恐れて個人事業主には融資をしたくないということになります。
それでは個人事業主はスムーズに銀行から融資を受けることができなくなり、事業の維持や発展に支障が出ます。
そこで公的機関である保証協会が融資の保証人になることで個人事業主も銀行からスムーズに融資が受けられるようにしているのです。
銀行としても公的機関である保証協会が融資の保証人になってくれるのであれば、安心して個人事業主にも融資を行うことができます。
個人事業主向けの事業資金の融資のほとんどは保証協会を利用した融資
返済の途中で個人事業主が死亡した場合
さて保証協会を利用した融資を返済している途中で個人事業主が死亡した場合の取扱いについて説明をします。
事業が継続される場合
父が個人事業主として事業を行っていたが、保証協会を利用した融資の返済の途中で死亡したとします。
その父が行っていた事業を妻や子供などの家族が引き継いで事業を継続する場合に、保証協会の返済はどうなるのでしょうか?
債務引受で返済を続けていくことになる
父が死亡しその事業を妻が主に引き継ぐ場合を例にします。
この場合には基本的に妻に父の借金を引き継いでもらいます。
今までは父が個人事業主として融資の債務者でしたが、引き継ぎ後は妻が個人事業主として融資の債務者になっていただきます。
父から妻に融資の債務者として地位を引き継ぐことを債務引受と呼んでいます。
この場合には父が負っていた融資の条件、つまり毎月の返済額や融資期間などはそのままそっくりと妻が引き継ぐことになります。
事業の後継者がいる場合には父の死亡に伴い借金が後継者に引き継がれる
父の死亡で事業を廃業する場合
今度は父が死亡してもう事業を継続せずに廃業する場合です。
このケースはなかなか厄介なことになります。
父の借金は相続される
父の死亡に伴い当然に相続が発生することになります。
相続の対象は預金や自宅などの資産は当然として借金に代表される負債も相続の対象となります。
そのため父の死亡とともに父の借金やそれに付随する返済の義務は相続人に自動的に引き継がれることになります。
つまり父の死亡に伴い父の借金やその返済義務は妻や子供などの相続人に引き継がれることになります。
妻や子供などのが借金の債務者になるということです。
父の死亡に伴い父の借金は妻や子供などの相続人に引き継がれる
父の死亡で相続された借金のその後について
個人事業主の父が死亡し父が保証協会を利用して銀行から受けていた融資が妻や子供などの相続人に引き継がれた場合のその後について説明をします。
まずは妻や子供などの相続人が返済する義務を負う
父の借金を妻や子供などの相続人が相続したことにより、妻や子供などの相続人は融資の債務者となります。
つまり融資の返済をしなければならないということです。
まずこれが現実です。
父の死亡に伴い父の借金は相続人である妻や子供たちが返済をしなければならない
相続人に返済能力がない場合
父の死亡に伴い事業を廃業する場合には、残された妻や子供などの相続人に父の借金を返済するだけの余力が乏しい場合が少なくありません。
つまり妻や子供などの相続人は父が残した借金を返済することが困難な事態が多いということです。
銀行による保証協会への代位弁済請求
この場合には融資をしていた銀行は保証人である保証協会に融資の全額返済を行うように求めることが一般的です。
これを銀行による保証協会への代位弁済請求と呼んでいます。
代位弁済により銀行の融資は返済される
銀行からの代位弁済請求により保証協会は原則として父が負っていた融資全額を銀行に返済をします。
これにより父が負っていた銀行の融資はすべて返済されることになります。
保証協会が銀行に父に代わって融資全額の返済を行う
相続人は保証協会に返済する義務を負う
保証協会による銀行に対する代位弁済により確かに父の融資全額は返済されます。
しかしこれで父が負っていた融資の返済義務がなくなるわけではありません。
保証協会による代位弁済により銀行の融資の債権は今度は保証協会に移転することになります。
したがって妻や子供などの相続人は銀行に対して融資の返済をする義務はなくなりましたが、今度は保証協会に融資の返済を行う義務を負うことになります。
保証協会による代位弁済により妻や子供などの相続人は保証協会に返済する義務を負う
保証協会との返済交渉
妻や子供などの相続人は保証協会と返済に関する協議を行う必要があります。
妻や子供などの相続人の収入状況などにより、毎月いくら返済が可能なのかを保証協会と協議を行い、その後保証協会に返済を続けていくことになります。
相続放棄という選択肢
なお民法では相続放棄というものが認められています。
相続放棄をすることにより資産に加えて借金に代表される負債の相続も放棄をすることが可能となります。
相続放棄を選択される相続人さんもいらっしゃいます。
父が亡くなった後の借金:保証協会を介した対応手順のまとめ
以上、個人事業主である父が死亡した場合の、借金の返済についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・父の死亡に伴い事業を廃業する場合には銀行は保証協会に代位弁済を求める
・保証協会の代位弁済により妻や子供などの相続人は保証協会に返済をする義務を負う