銀行融資の基本

根抵当権の被担保債権とは

銀行融資の担保で代表的なものは不動産担保です。
そして根抵当権の不動産担保が多く利用されています。
不動産担保の根抵当権とは何か、根抵当権の被担保債権とは何か、そして根抵当権の注意点について説明をします。

質問

私の妻は、零細企業を経営していたものですが、現在は、後継者に会社を譲り、まったく経営に関与していません。
妻は、経営者時代に、ある取引銀行との間で、妻個人の不動産に根抵当権を設定していました。
妻が経営から離れた段階で、銀行側に根抵当権の抹消をお願いしましたが、残高があるためとのことで、抹消には応じてくれませんでした。
ただ、妻が把握していた限りでは、その銀行に対する会社の借入は、根抵当権の極度額よりも少なくなっているはずでしたから、確定請求をしようと思っていました。
ところが、実は、妻の退任後、銀行は会社に追加融資をしており、実は、極度額以上の借入がなされていることが判明しました。
追加融資については、会社からも銀行からも一言も連絡がありませんでした。
銀行は、妻が経営から外れていることは知っていました。
それにも関らず、妻に断りもなく、追加融資をし、妻の根抵当権の被担保債権額を無断で増やすようなことが許されるのでしょうか。
妻は経営から外れており、銀行もそのことを知っていたのですから、少なくとも、妻に一言、承諾を得るべきではないのでしょうか。
無断でなされたことを理由に、銀行に追加融資分については、根抵当権の範囲外だと主張することはできるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。

根抵当権とは

まず最初に根抵当権について整理をしておきます。
根抵当権は民法398条の2で次のように定められています。


第398条の2
1.抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2.前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
3.特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(電子記録債権法(平成19年法律第102号)第2条第1項に規定する電子記録債権をいう。次条第2項において同じ。)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。


1.抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。の部分が根抵当権とは何かを説明している部分です。
ポイントは一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保という部分です。
普通の抵当権が特定の債権を担保するのに対して、根抵当権は一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するというところが特徴です。
極度額という一定の限度はあるものの、担保の対象となる債権は抵当権のように特定されているわけではありません。

被担保債権とは

被担保債権とは根抵当権の対象となる債権のことです。
簡単に言えば根抵当権の対象はどの融資かということです。
さきほどの民法では根抵当権の被担保債権はつぎのように表記されています。
不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
根抵当権の被担保債権は不特定の債権となっています。
もっとも不特定となるとあまりにも負担が多すぎますので、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定と歯止めをかけています。

銀行との融資取引では

銀行との融資取引において根抵当権の被担保債権とは限度額を設定してすべての融資が被担保債権となっています。
特定の融資だけが根抵当権の被担保債権ではなく、すべての融資取引が根抵当権の被担保債権ということです。
例えば現在、銀行から3件の融資を受けている場合には、根抵当権の被担保債権は3件のうちのどれかということではなく、3件すべてが根抵当権の被担保債権ということになります。
さらに将来、発生する融資も根抵当権の被担保債権となります。
現在は3件の融資取引だけですが、例えば3ヶ月後にもう1件、別の融資を受けた場合にはその融資も根抵当権の被担保債権になるということです。

今回のケース

さて今回のケースですが妻の所有不動産に設定されている根抵当権に関して、妻が経営から離れた後に発生した融資の根抵当権の被担保債権になってしまっているという状況です。
根抵当権の被担保債権の定義から言えば、妻が経営から離れた後に発生した融資の根抵当権の被担保債権になってしまうのはやむを得ないところです。
しかしご質問者が言うように道義的に問題はありそうです。

根抵当権の被担保債権に対する銀行の理屈

銀行側の理屈としては、
・根抵当権は将来を含む債務者の一切の債務を担保するもの
・追加融資にあたってはいちいち担保提供者の同意を取り付ける必要はない
・そもそも担保提供者は上記のことを承知してその地位についているはず
といったところです。
根抵当権というのはその設定極度までは担保するという性格のものですから、その担保価値を考慮して銀行が債務者に追加融資すること自体はよくあることで、それ自体は問題がないことです。
そしてその際、債務者に追加融資を行う際に、根抵当権の提供者に連絡することは銀行に義務付けはされていません。
根抵当権の担保提供者は最初からそのことを承知の上で、担保設定を受けているというのが銀行の考えです。
ただし今回の場合には、その前に奥さん、つまり担保提供者から根抵当権の解除の意向を銀行に示しています。
したがって銀行としては追加融資を行う際には、担保提供者に事前に知らせることを義務ではないにしても、行うべきだと私も思います。
銀行の注意義務と言えるものかもしれません。
根抵当権の解除を銀行に相談され、無理との返事が来た時点で速やかに確定請求をしておけば良かったかもしれません。
根抵当権が有効に存在している以上は、銀行に追加融資の無効を主張し銀行がそれに応じることは難しいと思いますが、今後のこともありますので、奥様と会社と銀行と一度三者で話し合いをもたれるのが宜しいかと思います。

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