銀行から運転資金や設備資金で受けた融資を他の目的に流用することを資金使途違反と呼んでいます。
ところでこの資金使途違反ですが銀行にはバレないのでしょうか?
銀行の融資実務の観点から資金使途違反がバレないのかどうかについて融資担当の銀行員が説明をします。
目次
銀行の資金使途の確認方法
最初に銀行が融資の資金使途をどのように確認あるいは管理をしているかの実務をご案内します。
銀行融資の2大資金使途である運転資金と設備資金についてそれぞれの資金使途の確認及び管理方法を説明します。
運転資金の資金使途確認方法
最初に運転資金の資金使途確認方法です。
運転資金の融資は実に幅広い資金使途に対応をしています。
運転資金の資金使途の例
運転資金の資金使途の代表的なものは次のとおりです。
運転資金の資金使途の例
・従業員への人件費の支払い
・外注費の支払い
・運送代金の支払い
・家賃の支払い
・税金や社会保険料の支払い
融資後の口座の出金内容を確認
銀行の運転資金融資の資金使途の確認は融資後の口座の出金内容を確認することで行います。
もっとも原始的な方法ですが、口座の出金内容を確認することが運転資金の資金使途の確認には最適な方法です。
運転資金の融資後、その融資資金が完全に口座から出金されるまで口座の状況を銀行は確認・管理をしています。
運転資金の融資の資金使途確認は口座の出金内容を確認して行っている
設備資金の資金使途確認方法
設備資金は不動産の購入や建物の新築や改装、機械の購入、車両の購入などおよそ設備投資で必要となる資金を融資の対象としています。
設備資金の融資の資金使途管理はこれら設備代金の支払先にきちんと資金が支払いがされているかどうかを確認しています。
不動産の購入であれば不動産の売り主にきちんと売買代金が支払われているか、機械の購入であれば購入先にきちんと購入代金が支払われているかどうかを確認します。
これらの支払いは一般的には振込で行われることが大半ですから、銀行はその振込に関わる領収書を確認して設備資金の融資の資金使途管理を行っています。
設備資金の融資の資金使途管理の実務
設備資金の融資の資金使途管理の実務ですが、これは設備投資金の融資の契約時に融資先から支払先への振込伝票を一緒に預かることで行っています。
例えば運送用のトラックの購入であれば、そのドラック購入のための設備資金の融資の契約を行う時に、一緒にディーラーなどのトラック購入先への支払いのための振込伝票や通帳などを一緒に銀行は預かります。
そして設備資金の融資の実行直後に事前に預かった振込伝票で銀行は支払先への振込を実施します。
設備資金の融資の契約時に一緒に支払いのための振込伝票等を預かること、そして融資実行後直ちに振込を実行することで設備資金の融資が他に流用されないように銀行は管理をしているのです。
設備資金の融資の契約時に支払いのための振込伝票を一緒に預かることで資金使途を管理している
資金使途違反の事例
ではここからは融資の資金使途違反の事例をご紹介します。
運転資金の資金使途違反の事例
運転資金の資金使途違反の事例は次のようなケースです。
運転資金の資金使途違反の例
・他の借入金を返済する
・株式などに投資をする
・社長などに資金を貸し付ける
・機械の購入など設備投資に使う
これらが代表的な運転資金融資の資金使途違反の例です。
設備資金の資金使途違反の事例
設備資金の資金使途違反の事例は次のようなケースです。
設備資金の資金使途違反の例
・当初とは異なる支払先に支払う
・違う設備投資の代金に充当する
設備資金の資金使途違反の例について少し補足説明をします。
設備資金の融資を銀行に申し込む際にはその金額がわかる資料、例えば見積書などの提出が必ず必要です。
銀行では設備資金の融資はこの見積書の金額の範囲内で審査を行います。
例えば見積書の金額が1,000万円でこのうち、800万円の銀行からの設備資金の融資で資金を手当てするといったようなケースです。
「当初より少ない金額で支払う」とは
「当初より少ない金額で支払う」とは見積書の金額が1,000万円であれば支払先には1,000万円を支払うはずです。
それが例えば900万円とか、700万円といったように見積書の金額より少なく金額を支払う場合のことです。
このケースで設備資金の融資金額が800万円であれば、当初の金額の1,000万円よりは少ないものの900万円であれば設備資金の融資は設備投資の支払いに充当されたと考えることができますから、資金使途違反には該当しません。
しかし700万円になると設備資金の融資金額よりも少ない金額となり、少なくとも差額の100万円は資金使途違反となります。
銀行に見積書を提出した後に支払先と交渉をして値下げとなった場合に起こる事例です。
当初の見積金額から変動があった場合には、速やかに銀行に連絡をしてください。
少なくとも融資の契約を行う前に連絡をする必要があります。
「当初とは異なる支払先に支払う」とは
銀行の設備資金の融資の資金使途の管理は金額だけではありません。
見積書の発行先に設備資金の代金が支払われるかどうかも管理をしています。
もし見積書とは異なる支払先に支払うということは、融資とは異なる設備投資に関わる代金だと考えることができるからです。
このケースは同じ設備投資、例えば機械の購入に関して複数の業者から相見積もりを取っている場合に発生することが多いです。
銀行に見積書を提出した後に、別の業者からより少なく金額の見積がありその業者から機械を購入することにしたような場合です。
さきほどのケースと同様に業者が変わる場合にはその新しい見積書ととともに銀行には必ず連絡をしてください。
「違う設備投資の代金に充当する」とは
機械の購入資金として融資を申し込みしたものの、実際は機械の購入ではなく工場建物の修繕費用に利用した場合などがこのケースに該当します。
銀行の設備資金の融資は対象とする設備投資を限定した上で審査を行い融資を実行します。
機械の購入と工場建物の修繕とはまったく異なる設備投資となります。
したがって設備資金融資の資金使途違反となります。
融資の資金使途違反がバレたらどうなるのか?
融資の資金使途の管理を銀行は厳格に行っています。
したがって融資の資金使途違反がバレないということはありません。
融資の資金使途違反は必ず銀行にバレます。
では資金使途違反がバレたらどうなのかを説明します。
資金使途違反に対する銀行の対応は資金使途違反の悪質さによって異なってきます。
融資全額の即時返済を求める
銀行が悪質な資金使途違反と考えた場合には、その融資全額を即時に返済を行うよう求めます。
資金使途違反は融資の契約違反なのですから。
銀行が悪質と考えるケースとしては運転資金を社長などの第三者に貸し付ける、株式などに投資をする、他の借入金の返済に充てるケースなどです。
資金使途違反がバレたら融資全額の即時返済を求められる可能性がある
資金使途違反の部分だけ返済をするよう求められる
資金使途違反が融資全額ではなく融資の一部であった場合には、その資金使途違反に該当する部分の金額の返済を求められます。
もっとも銀行が資金使途違反が悪質だと考えれば一部の金額の資金使途違反であっても融資全額の返済を求めることもあります。
資金使途違反の部分だけの一部返済を求められる
資金使途違反を元に戻すように求められる
これは比較的穏便な銀行の対応です。
例えば運転資金として融資した資金を社長の個人口座に振込をした場合、社長からその資金を会社の口座に戻すように求めるということです。
会社の口座に戻せば資金使途違反はなかったことにするという対応です。
資金使途違反を元に戻すように求められる
融資の資金使途違反がバレないということはない
結論として融資の資金使途違反がバレないということはありません。
資金使途違反は必ず銀行にバレると考えてください。
そして資金使途違反を把握すれば銀行が黙っているということはありません。
融資の返済など必ず銀行から対応を求められます。
融資の資金使途違反は必ずバレる
融資の資金使途違反がバレないでしょうか?のまとめ
以上、融資の資金使途違反はバレないのかどうかについてまとめますと次のようになります。
まとめ
・融資の資金使途違反に対して銀行が不問にすることはない
・融資の全額返済など必ず銀行は対応を求めてくる