銀行から融資を受けるには審査に通る必要があります。
その融資の審査ですがどれくらいの時間がかかるのか気になるところだと思います。
法人向けの銀行融資の審査期間と審査機関を短縮する方法について融資担当の銀行員が説明をします。
法人向け融資審査の流れ
では最初に法人向けの融資審査がどのような流れで行われているのかを説明します。
融資審査の流れの全体像
この図は銀行の融資審査手順を示したものです。
どのような融資案件であっても必ずこの審査手順を踏んで銀行は融資可否を判断しています。
何をしている会社か?
融資審査のスタートは「何をしている会社か?」です。
銀行の融資審査のスタートはまずは融資先が何をしている会社かの理解から始まります。
すでにその銀行で融資を利用している場合には、融資先が何をしている会社なのかを銀行は把握していますが、初めての場合には何をしている会社かを銀行はわかりません。
そのため初めての銀行に融資を申し込む場合には事業の内容がわかるもの、例えば会社案内とかホームページの写し、製品のパンフレットなどの資料を準備して融資の相談を行うことをおすすめします。
何をしている会社かは融資審査のスタート
業績はどうか?
何をしている会社かの次は業績です。
この業績はどうかが銀行の融資審査の中心です。
業績を把握して融資の返済能力を検証するのです。
銀行の融資業務においてもっとも大切なことは融資を拡大することではありません。
もっとも大切なことは融資が最後まで回収できるかどうかです。
万が一、融資が最後まで回収されなければそれは銀行が貸倒という損失を被ることとなります。
貸倒は銀行としても何としても避けたいところです。
そのため融資審査においては融資の返済能力の検証がもっとも大切なところとなります。
基本的には決算書3期分の提出が必要になります。
設立してまだ3期が経過していない場合には1期分や2期分で大丈夫です。
また決算書のほかに試算表や資金繰り表の提出を銀行から求められることもあります。
業績がどうかが融資審査の中心
資金使途は何か?
会社向けの銀行の融資はその会社の事業で必要となる資金が対象です。
運転資金や設備資金は銀行の会社向け融資の代表的なものです。
今回の融資の資金使途は何か、なぜ融資が必要となるのかといったことを検証します。
融資形態や融資期間、利率
銀行の融資形態は手形貸付や証書貸付、当座貸越など複数があります。
融資の資金使途に応じて最適な融資形態が選択されます。
そして融資形態に関連して融資の期間が定められます。
また融資の利率をどの程度にするかも決まります。
基本的には業績が良好であるほど利率が低くなり、業績が悪いほど利率が高くなります。
保全
保全とは担保や連帯保証人のことです。
保全の確保は銀行にとって大切なことです。
融資を実行した際には返済に懸念がないと考えられるとしても、その後に業績が悪化して返済に支障が生ずる可能性もあります。
融資の審査時には返済能力に懸念がないと考えられたとしても、その後の景気の悪化などが影響して業績不振に陥ることはありうることです。
そのような場合に備えるのが保全です。
返済ができなくなったとしても担保を処分して、あるいは連帯保証人に返済を請求して融資を最後まで回収することに努めなければなりません。
担保や連帯保証人が必要かどうかを含めて融資審査の中で検証がされます。
保全とは担保や連帯保証人のこと
他行の動向
複数の銀行から融資を受けている場合には他行の動向も融資審査の重要なポイントです。
複数の銀行が融資をしている場合、その会社の資金繰りを複数の銀行が支援をしていることになります。
他の銀行が融資の回収を進めている場合、そのしわ寄せを他の銀行が受けることとなります。
他行がネガティブではなく継続して融資を行っているかどうかが確認されます。
他行の融資姿勢も融資審査のなかで検証される
資金調達の余力があるかどうか
どれだけ業績が不振であっても資金繰りが続く限り、会社は倒産をしません。
逆にどれだけ業績が好調であっても資金繰りがショートしてしまえば、その時点で会社は倒産をしてしまいます。
担保などがあればその会社はその担保を利用して資金が調達できる可能性があります。
資金調達余力とはその会社がまだ資金を調達できる可能性があるのかどうかが検証されます。
担保の有無や信用保証協会の保証余力が資金調達余力を検証するうえでの物差しとなります。
資金調達余力とはその会社があとどれくらい資金が調達できる可能性があるかどうかということ
取引採算
銀行は株式会社ですから収益を獲得しなければなりません。
融資は会社の資金繰りを支援する側面とともに銀行の収益獲得ビジネスでもあります。
銀行の収益は融資だけではありません。
預金取引や振込取引、外国為替取引もあります。
融資先との取引において融資のほかにどのような取引があるのか、それらの取引において銀行の採算が適正な水準を獲得できているのかどうも審査がされます。
取引の採算が低い場合には融資利率を引き上げて採算を確保しようとも銀行が行います。
適正な収益が獲得されているかどうも融資審査の一環で行われる
今後の方針
最後に融資先との今後の取引方針を決めます。
今回の融資取引を機にどのように取引を拡大をしていくのか、その可能性があるのかどうかが検討されます。
融資の審査期間
それでは銀行の融資の審査期間はどれくらいであるのかを説明します。
融資の審査期間は初めて銀行から融資を受ける場合と、すでに融資を受けている場合で大きく異なります。
そのため初めて銀行から融資を受ける場合の審査期間とすでに融資を受けている場合で追加で融資を受ける場合の審査期間に分けて説明をします。
新規先への融資の審査期間
さきほどの審査手順は既に融資取引がある取引先、今回が初めてとなるお客様に関わらず同じ手順にて融資審査が行われます。
しかし既に融資取引がある取引先については銀行は多くの情報を保有しています。
したがって上記の審査手順を踏んで審査が行われるものの、既にわかっているところもありますからそれだけ審査はスピーディに進んでいきます。
これに対して新規先に関しては銀行はほとんど情報を持っていません。
一からすべて調べる必要があります。
特に審査手順の最初にある「何をしている会社か?」について銀行は徹底的に調べます。
融資は銀行にとって収益を得る有力な手段であることに間違いはありません。
それとともに融資は焦げ付けばそれは銀行にとって損失が発生することとなります。
したがって銀行は融資審査において最終的に融資が焦げ付く危険性がないのかどうかを入念に審査を行うのです。
「何をしている会社か?」というのは返済可能性を検討するにあたってとても重要な情報ですから、徹底的に銀行は調べるのです。
すでに取引がある先であれば「何をしている会社か?」ということは銀行は知っています。
しかし新規先については銀行は知りません。
ここに実は銀行は多くの時間を割いて調べるのです。
「何をしている会社か?」以外の審査項目についても銀行は入念に調べますから、初めての融資先、つまり新規先についてはどうしても審査期間が長くなってしまうのです。
1週間や2週間では無理
初めての融資先についてはこのように入念に様々なことを銀行は調べますから、1週間や2週間で審査結果が出るようなことはありません。
一方ですでに融資取引がある取引先については1週間や2週間で審査結果を出すことは可能です。
最短でも1ヶ月はかかる
初めて銀行に融資を申込んだ場合、審査結果が出るには最短でも1ヶ月はかかると考えてください。
したがって融資が必要な時期から逆算して余裕をもって銀行に相談することが大切です。
どれだけ急いで審査をしてくれと銀行に頼んだとしても初めての融資先の場合には、最短でも1ヶ月は審査に時間を要しますから、それよりももっと早く銀行に審査を頼んだ場合には申し込みを断られることも少なくありません。
銀行としては無理なものを引き受けて後から「間に合わない」というトラブルに発展することを避けたいからです。
初めての銀行融資の申込はとにかく早く相談することが大切なこととなります。
新規先に対する融資の審査期間は最低でも1か月はかかる
既存先への融資の審査期間
すでに融資取引がある既存先については「何をしている会社?」を含めて多くのことをすでに銀行は知っています。
業績の状況についても詳しく銀行は把握してします。
したがって既存先の融資の審査期間は新規先に比べるとはるかに短期間で終わります。
1週間程度で融資審査の方向性は固まります。
貸すか、それとも貸せないかが1週間程度でわかります。
既存先の融資の審査期間は1週間程度で終わる
審査期間を短縮する方法
それでは銀行の融資の審査期間を短縮する方法をいくつかご紹介します。
審査で求められる資料を前もって準備をしておく
銀行に融資の申し込みを行うと必ずいくつかの資料の提出を求められます。
そして銀行から求められる資料はおおむね決まっています。
銀行から求められてから資料の手配や作成を行うとなると、それだけ時間を要してしまいます。
あらかじめ想定される資料を準備をしておくことで審査期間を短縮することができます。
銀行が求められる可能性のある資料で主なものは次の通りです。
銀行から求められる主な資料
・製品のパンフレットなど
・決算書
・試算表
・資金繰り表
・見積書(設備投資の場合)
質問には早く答える
銀行に融資の申し込みを行い、資料を提出した後にしばしば銀行から質問を受けることがあります。
その質問に早く答えることが審査期間を短縮につながります。
質問の回答を受けて銀行の融資審査は前へ進んでいきます。
質問の回答を受けるまでは審査は止まります。
時には面倒くさい質問を銀行から受けることもあるかとは思いますが、審査期間を短縮するには早く回答をすることです。
銀行からの質問にはできるだけ早く回答をする
融資希望日を明確に伝えておく
銀行に融資の申し込みを行う際には融資がいつ必要となるのか、融資希望日を明確に伝えてください。
「早めに」とか「今月末ぐらい」といったことではなく「何月何日に必要」だと明確に融資希望日を伝えてください。
銀行では原則として融資希望日までに審査を終えようとします。
融資希望日を明確に伝えることで銀行の担当者にプレッシャーを与えることもできます。
融資希望日を明確に伝える
法人向け銀行融資の審査期間と短縮法のまとめ
以上、法人向けの銀行融資の審査期間と短縮法についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・既存先の場合の審査期間は1週間程度
・審査期間を短縮するには①資料の事前準備②銀行からの質問への早期回答③融資希望日を明確に伝えることがポイント