新型コロナウイルスの影響により飲食店の苦戦が連日報道されていますが、夫婦で中華料理店を営んでいるご主人がコロナ関連融資の申込に来られた。
今回は中華料理店に実行した運転資金融資の資金使途違反の話です。
銀行融資で資金使途違反が発生した場合の銀行の対応について融資担当の銀行員が説明をします。
目次
銀行融資を資金使途違反した場合の銀行に対応
最初に融資で資金使途違反が発生した場合の銀行の対応についてまとめます。
資金使途違反の場合の銀行の対応
・資金使途違反の部分の融資の一部返済を求める
・資金使途違反の部分を元に戻すように求める
これら3つが資金使途違反に対する銀行の対応です。
どの対応をするかはケースバイケースです。
いずれにしても資金使途違反に対して銀行がそのままにして何も対応をしないということはありません。
近隣の中華料理店から運転資金の相談
銀行のある支店の近くで昔から夫婦で中華料理店を営んでいる小企業の取引先があります。
いわゆる町中華屋さんですね。
もうこの地で30年ほど営業を続けているとのこと。
今回の新型コロナウイルスの影響により来店客が極端に減少。
家賃支払などこの先の資金繰りに不安を覚えてコロナ関連融資の相談を受けました。
中華料理店に運転資金は不要だが・・・
今回の中華料理店のように飲食業というのは基本は現金商売です。
運転資金というのは掛売りで商売をしているところに必要になってくる資金使途であり、現金商売の場合には基本的に運転資金は不要です。
銀行はそのように考えています。
したがって今後の資金繰りが不安なのでというような広い意味の運転資金融資は中華料理店のような飲食業には避けたいというのが銀行の本音です。
しかし新型コロナウイルスの影響で来店客が大幅に減少、つまり売上が大幅に減少しているため先々の不安から手元資金を厚くしておきたいという気持ちもわかります。
結論としてコロナ関連融資制度を利用して運転資金として300万円の融資を実行しました。
その際、社長である中華料理店のご主人に「運転資金としての融資ですから、くれぐれも家賃支払とか材料の仕入代などに使って下さい」と念を押して融資契約を締結しました。
運転資金として使用するように資金使途を徹底したが・・・
奥さんの口座に振込
融資実行後、その資金がどうなっているか事後確認を行ったところ、およそ1か月後にその融資資金がご主人の奥さんの口座に振り込まれていることが判明しました。
奥さんに口座に振り込むことが運転資金では全くありません。
明らかに融資の資金使途違反です。
さっそくご主人の経緯を確認するため連絡をしました。
銀行とご主人との会話
銀行:「この前の運転資金として融資を行いました300万円ですが、奥さんの口座に振込をされていますよね。どのような理由からですか?」
ご主人:「いやあ、実は女房の弟も商売をやっていて、お金が苦しいというので女房の口座に振り込んで、そこから女房が弟に振り込んであげたんだよ」
銀行:「それはまずいですね。融資のご契約の時にも繰り返し説明をさせていただきましたが、こちらの融資は運転資金です。家賃とか材料代の支払いなどに充ててくださいと案内をしたはずです」
ご主人:「そうなんだよね。それはわかっていたんだけど融資のお金はすぐに使う予定はないし、女房に頼まれたものだから・・・」
銀行:「事情はわかるのですがこちらしても運転資金として使われていないことがわかった以上はそのままにしておくことが難しいです。奥さんの口座から会社に資金を戻してもらうことは出来ませんか?」
ご主人:「そんなに大変なことなの。こちらとしてはすぐに使う予定はなかったから一時的に弟を助けてやろうという気持ちだけなんだけど」
銀行:「そのお気持ちは十分にわかります。しかしこちらとしても融資が使途通りに使われていないことはとても重要なことなのです。何とか戻していただけないですか?」
ご主人:「そこまで言われるのならわかりました。自分のお金を弟に貸してやって女房の口座から会社に戻すよ」
銀行:「硬いことを言って申し訳ありませんが、くれぐれも早期によろしくお願いします」
資金使途違反は原則全額回収
銀行にとって融資した資金がきちんと使途通りに使われていることはとても重要視していることです。
したがって資金使途違反が分かった場合には銀行は原則として全額の返済を求める姿勢です。
今回は長年の取引先であり事情も理解は出来ますので、穏便に対応しようとして奥さんに移した資金を戻してもらうことで決着を図ることにしました。
しかし今回のケースのような穏便な対応ばかりではありません。
繰り返しですが資金使途違反が判明した場合には全額の融資返済を求めるのが銀行の基本的に対応方針です。
くれぐれも融資は使途通りに利用してください。